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第7話−砕けたカタミ

 モコナが次に小狼たちを誘(いざな)った世界。それは「秘術」という不思議なチカラが存在する国、ナユタヤ国だった。
 市場の真ん中に落とされた彼ら。その喧噪(けんそう)を聞きつけ、やってきた男たちが居た。男たちを率いる男は、この国の領主・タンバルの息子・ブルガルという。サクラを連行しようとする彼に、とっさに「脚」が出た小狼。一触即発の雰囲気。それを、上から見下ろしつつ牽制する少女が現れた。彼女の名前は「チュニャン」。彼女は小狼たちの容姿を見るや、どこかで思い当たるフシがあったのか、小狼たちを家へと連れ帰る。
 彼女は、どうやら小狼たちを、政府が各国へと放った「密偵衆(みっていしゅう)」と考えたらしい。密偵衆とは、その国の領主が私利私欲を働いていないかを探る役目を持つという。
 
 街外れの小川で語るチュニャンとサクラ、そして小狼。さきほど、街で誘われた福引きで見事1等を引き当てたサクラの強運を見て、チュニャンは「神の愛娘」だと言った。サクラの過去のくじ運の強さをさらに問う彼女。だが、記憶を失い、断片的にしか覚えていないサクラを前に、彼女は言葉を詰まらせる。小狼も、サクラが言葉の最後に付け加えた言葉、「…小狼くんが。」という言葉に強い反応を示していた。クロウ国で、特別に仲の良い二人は名前だけで呼び合うと兄に教わったサクラ。対価として関係性を差し出した彼らが、再び名前だけで呼び合うことが叶わないと察した彼は、サクラの問いかけに「…はい、サクラ姫」と応える。
 そんな中、3人は近くで黒煙が立ち上るのを目にする。現場へ駆けつけると、そこには先ほどの領主の息子、ブルガルの姿が。税金を滞納した民へ、懲罰として家を秘術で燃やし去った彼らを前に、怒りに震えるチュニャン。そして、彼女を制止し、目の前に立ちはだかる小狼。市場での足蹴りの報復を考えるブルガルは、チカラを秘めた扇を一煽し、秘術の兵を召還する。その扇は、秘術師であったチュニャンの母の、唯一のカタミであった。
 現領主・タンバルは1年前にこの町へやって来たという。その時はさしたるチカラを持たなかったのだが、ある時突然強い力を得、前領主を追放し、今の地位を奪い取ったという。チュニャンの母は強い力をもつ秘術師であったが、圧政を働く領主に蜂起し、命を奪われる。
 息子の秘術兵を、再び一蹴した小狼。そこに、領主が巻き起こした風が襲いかかる。旋風に巻き込まれた小狼。父のチカラの絶大さを顕示し、勝ち誇る息子は、さらに手にした扇に目をやる。いやな予感を察したチュニャン。その瞬間、ブルガルは扇を巻き起こる旋風の中へと投げ入れた!
 粉々にくだけた、扇。かけらとして地に落ちていく、母の形見。その部品の一つを手に、チュニャンは悲嘆と怒りの縁へと追いやられる。