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黒ジィ   2016/04/07(Thu) 01:29
夜の店。縁側に腰掛けた君尋が,映像の中の小狼と話し合っていた。投影しているモコナ自身は,君尋の両手の平に収まって眠っている。 「おれが諦めない限り 必ず また逢える」「小狼に」「おれにとって それが」「得られた最上の答えだ」 落ち着いた声で語る相手に,君尋も正直に話す。 依頼品を集めにいった世界の侑子は,侑子さんではなかったが, 「小狼とはまた別だけれど」「おれも 答えを得たよ」「侑子さんと逢う為の」 そして,話題を変えた。 「渡したものがひとつ」「まだ手元にあるのかな」 小狼はベッドの上で白モコナをかかえてあぐらをかいていたが,その左脇に,中に1本の小枝が渡してある鳥かごが,置かれていた。 中の花は受け取るが,かごは貴重なものだから返す。それが,姫神の判断だった。 「では モコナを通じて返却 ということで」と,君尋。 すると, 「この対価は」 と,問われた。そこで,黒鋼とファイが,白モコナを通じてニライカナイで使ったものの対価は彼らも支払うと連絡してきたことを,伝えると,小狼は困惑のようす。 「でも」「これは おれが勝手に…」 「だとしても」「同行した2人とモコナは,あれらがなければ 怪我では済まなかっただろう」「無理筋ではないよ」 さらに, 「ここで断ったら,小狼 起こられるんじゃないのかな みんな 怒ると怖そうだけど」 にこやかに同意を促した。 口をつぐんでいた小狼の顔に,かすかな笑みが浮かんだ。 「…御礼を 言う」「みんなに」 「それが一番 喜んでくれるよ」 顔をほころばせてそう言った君尋にも, 「本当に …有難う」 そのとき,映像が,消えはじめた。君尋は,別れのことばを送る。 「旅路に」「幸多からんことを」 “しゅる”と映像が消えてしまうと,君尋は,手元を見た。 「モコナ」 呼ばれたほうは,目をさまして“ぴょんこ”とはねる。 「戻ってくるものがある」 「おう!」 モコナが口を大きくあけると,風がうなりとともに吹き出した。それが収まったとき,目の前には,鳥かごが浮かんでいた。それを見つめる君尋。 「渡した時と違うものとして 返ってきたな」 「こちらでは ただ,あの花を運ぶ為の籠 でしかなかったんだが」「持ち込まれた世界で 力を得て来たようだ」 「やはり 『ものは行くべき時に行くべき所に行く』…だな」 立ち上がったので,足元のモコナが,尋ねる。 「どうした」 片手でつり金具をつかみ底に片手を添えてかごを持った君尋は,振り向いて言った。 「使いを出す」「これを渡す為に」
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