対峙する阿修羅王と夜叉王。そのとき、周囲の景色が揺らめき出す。両陣ともに、その場を離れなければならない時が来たのだ。去り際に、「今度はとどめを刺すつもりで来い」と言い残す黒鋼。こうして、小狼の月の城における初陣は終わった。
そのころの阿修羅城。ようやく目覚めたさくら姫は、戦から戻ってきた満身創痍の小狼の姿を見て驚き走り寄る。ケガの具合を語らぬ小狼に、「せめて心配だけはさせて」と、矢に打たれた肩に手を当てる。かつて父に教わった、特別な力が無くても、想う気持ちをいっぱい込めれば、痛みを和らげることができるということ。想いを込めて、笑顔を添えて、「自分ができること」で癒そうとする姿に、小狼の顔もほころびる。
「月の城に行って、なにかわかった?」
モコナの問いかけ。月夜に浮かぶ城を見つめながら、小狼は戦場での出来事を語るとともに、二人の瞳−彼らが知る二人とはちがう、黒い瞳−について言及する。それは、夜叉国の民である証。では、彼らとともに旅してきた二人は、いずこへ…?
場所を変えて。
二人をずっと観察する、謎の二人。だが、彼らを映し出すはずの鏡には、いまはノイズばかりが現れる。
「…想定範囲外の世界に移動してしまいましたね。」
飛王・リードと呼ばれた彼は、思惑と違い、二人の生命に危険が及ぶ事態を苦々しく思っていた。思い通りにいかない理由に心当たりがある彼は、手の内にある「秘策」の出番に、ついに言及した。
…培養庫で眠る、「小狼(シャオラン)」という名の、隻眼の少年のことを。